みんなの声援が走り続けるための力になる
2月4日、向島グラウンド。今年最強レベルの寒波が日本列島を襲い、開会式時点では気温3℃。しかし青空が広がり、風もそれほど強くない絶好の長距離走日和です。毎年恒例の中学長距離記録会が、今年も開催されました。朝9時、3年生記録会の開会式が始まります。体操服姿に、クラスごとの鉢巻きを巻いた生徒たちが整列しました。
この日までに生徒たちは体育の時間で約1か月の練習を積んできました。なかにはタイムを縮めるために個人で練習を重ねてきた生徒も。
まずは西村学校長からの開会のあいさつです。
「この長距離記録会はこの学年最後のスポーツ系大会となります。走るということは日常の動作のひとつですが、これを競い合う長距離走は自分との戦いです。昨年に比べて、1か月前に比べて、そして昨日の自分に比べて成長を実感することのできる貴重な機会です」
また2月2日(日)に開催された別府大分毎日マラソンにて、本学卒業生の若林宏樹選手(青山学院大)が、初マラソン日本最高・日本学生新記録をマークしたことに触れ、
「若林選手は『沿道の観客からの声援に勇気づけられた』と語っていました。皆さん、走者にぜひ精一杯の応援をしてください。そして走者はそれを受け、最後まで走り抜いてください」
と語りました。


生徒の健康や体調に十分配慮して開催
記録会までの練習の成績により、AグループとBグループに分かれています。それぞれのグループから1人ずつペアを作り、Bグループが走っているときはAグループが記録係を担当。Aグループが走るときはBグループが記録を行います。
コースはグラウンドに描かれた長方形のトラック。一周375mの距離を8周走る、計3000mのコースです。
トラックの内側には3つの記録係のためのエリアが設けられ、走者の残りの周数ごとに記録係が「残り3周エリア」「残り2周エリア」「残り1周エリア」へと移動し、走者に残り周数を示しながら応援・記録を行うというシステムです。
学年それぞれ7組ごとに色分けされた黄色・紫・緑などのハチマキを頭に巻いて競技に参加。
スタート直前には、先生から競技前の注意事項が。
走行中に体調が悪くなった場合はコースの外側を歩くことなどを指示。大会は「最後まで走る」ことを目標としながら、体調や安全に万全を期して記録会は行われています。


自分に勝つ。昨日までの自分を超える。
スタートラインに続々と生徒たちが集まります。日頃の練習の成果を発揮するときとあって、みんな緊張した面持ち。
スタート直前に、生徒たちの目標を聞いてみました。
「1位!(3年男子)」「陸上部の人たちに負けないように走ります!(2年男子)」「誰にも負けないように頑張りたい(1年男子)」
と、並々ならぬ自信を見せる人もいれば、
「13分以内に走り切る!(3年男子)」「15分以内を目指す!(3年女子)」「14分以内で20位以内を目指します!(3年男子)」
と具体的な目標を上げる生徒も。やはり一昨年、昨年とこの記録会を体験してきた3年生は目標が明確です。
また、「自分のペースを守って最後まで走り切りたい(1年女子)」「ペースを守ることを前提に頑張りたい(2年男子)」
とペース重視の人や、
「走り終わったあとに大きな達成感を感じたい(1年女子)」「練習のときにいつも途中で歩いてしまうので、今日は最後まで走り切りたい(1年男子)」「目の前の走者の走りを見て、その人に負けないように頑張る!(2年女子)」「このコースを爽快に走り切って自分の実力を出し切りたい(2年男子)」
と“自分にとっての勝利”を目指す人も。
「自分に勝つこと。それが目標!(3年女子)」「必ず、去年の自分を超える!(3年女子)」
と、個人競技ならではの意気込みを聞かせてくれた人もいました。
そしてピストルが鳴り、競技がスタート。
生徒たちが一斉にスタートラインから駆け出します。


走者・記録係・高校陸上部・先生方…みんな一体に
いきなり全速力で飛ばす人もいれば、マイペースで走る人、どんどんペースを上げていく人、ペースを落とす人も……高校陸上部が生徒たちそれぞれの速度ペースに合わせて、後輩たちと伴走します。
洛南高校陸上部は昨年11月に開催された京都府高校駅伝でも10年連続31回目の優勝を決めた強豪チーム。単なるペースメーカーに止まらず、その華麗な走行フォームを実際に目にするのは、生徒たちにとって大いに今後の目標になったのではないでしょうか。
「ファイト―!」「がんばれー!」「あと●周!」と元気に走者を応援する記録係たち。しかしこの記録会は個人競技でありながら、クラス単位でタイムを競う団体戦でもあります。「もっとペース上げていけ!」「まだまだいけるぞ!」と檄を飛ばす声も。
先生たちも生徒たちを応援。「がんばれ!」「そのペース!」と声援で生徒を励ます先生や、「努力が一番カッコイイ!」「一生懸命楽しめ!」「諦める、ことを諦めろ!」と直筆の毛筆メッセージを掲げて生徒たちを鼓舞する先生の姿も。
また、放送を担当する先生からも…
「マラソンで一番の罠は“最後まで一緒に走ろう”という友達同士の約束です。一緒にゴールしてもタイムには差が出ます!どんどん裏切りましょう!」
との言葉。
各学年・各グループに混ざって自らもトラックを走る若手先生方の姿も見られました。
走る者、応援・記録する者、そして先生たちも一体となってグラウンドの熱気は最高潮。午後からは少し風が強くなりましたが、気温は8℃まで上昇しました。


達成感と、学校生活の大切な思い出を胸に
持てる全力を出し切って、次々とゴールする生徒たち。記録係たちは走者にタイムを伝えます。
お疲れのところたいへん恐縮ですが、ゴールした走者たちに今の気持ちとこの記録会の感想を聞いてみました。
「最後の周、本当につらかったけれど、最後まで走り切れてよかった(1年男子)」「疲れたけど、それ以上にやりがいがあった(2年男子)」「キツかったけど、やり遂げた達成感がすごい!(3年男子)」
と、やはり「達成感」を口にする生徒が多数。
また、
「これまでの練習は辛かったけれど今日、最高のタイムを出せました!(1年女子)」「何か“記録”を刻むことができるように、クラス1位を目指し、それを達成できた(2年男子)」
と、結果にこだわり、成果を残せたことに満足感を見せる人もいれば、
「女子1位を目指したのに果たせなくて悔しい!(2年女子)」「練習よりいい結果が出せなかった…残念!(3年男子)」
自分に厳しく反省点を口にする人も。
「来年は14分前半を目指す!(1年女子)」「来年に向けてもっと体力をつけ、15分切ることを目標にしたいと思います(1年男子)」
と、この時点で来年の目標を宣言する、やる気充分な人も見られました。
目標はなにも、タイムの向上だけではありません。
「途中で諦めて歩こうかと何度も思いましたが、これまで練習してきたことをムダにしたくないと思い、最後まで走りました(1年男子)」「1人でも抜かせばクラス対抗で貢献できると思い、精一杯がんばりました!(1年女子)」
と、スポーツ大会ならではの感想も。
そしてこの記録会は3年生にとって学校生活最後のスポーツ大会。
「とても疲れたけど、学年の最後の最後にこうして走ることができて良かったです(3年女子)」
そう語る生徒からは、大きな満足を感じました。
閉会式では個人・クラス別の順位が発表され、それぞれに表彰状を授与。そして、校長先生からは閉会の挨拶が。
「冷たい風のなか、全員が完走できたことをとても嬉しく思います。今日のこの結果や経験を糧に、残りの学年生活、3年生には残りわずかな学校生活を頑張り抜いてください!」
がんばり抜き、個人競技とはいえ一体となって熱くなったこの思い出を胸に、また一人ひとりの学校生活が始まります。
結果は、以下のとおりです。
1年 優勝:7組 準優勝:5組
2年 優勝:7組 準優勝:5組
3年 優勝:5組 準優勝:3組

