独特な緊張感と静けさのなかで繰り広げられる熱戦
令和7年1月8日(水)、本校柔道場において、図書館と国語科の主催による「新春歌かるた大会」が開催されました。今年で第56回を数える洛南屈指の伝統行事で、いつものスポーツ行事とは違った独特な緊張感と静けさのなか、白熱した闘いが繰り広げられました。
誰もが楽しみやすいルールで
12:30、参加者全員が正座礼で臨んだ開会式では、千何百年前に詠まれた和歌の魅力について、「過去のものではなくて、生きた財産である」と西村文宏中学校長の力強いメッセージを受けて、高校2年生により「かるた道にのっとり正々堂々と闘います」と選手宣誓が行われました。
続いては、競技かるた部員によるデモンストレーションと、山添先生による競技解説。公式戦では50枚の札を使用しますが、本大会では双方が15枚ずつ、計30枚。選手たちは時間をかけて、自陣に15枚の札を並べていきます。中央部分は避けて自分の手が届きやすい端のほうに札を集める配置にしたり、「一字決まり」と言われる札や「推し」の一枚を自分の取りやすい位置にキープしたりと、並べるときからすでに試合が始まっているのです。
ルールとしては、読まれた札(出札)に早く手が触れたほうが「取った」ことになり、自陣の札を取った場合は、1枚、自陣の札が減ります。相手陣にある札を取った場合には、自陣の札を1枚、相手に渡します(送り札)。これを繰り返し、自陣の札15枚が先になくなったほうが勝者となります。
また、競技かるたの花形とも言える、目にも留まらぬ早業で出札を「パシーン!」と払い飛ばす……いわゆる「払い手」は本大会においては禁止されている旨の説明もありました。しかしながら、せっかくのデモンストレーションということで本気の対戦も披露。「一字決まり」と言われる歌に反応して繰り出された払い手で、札が手裏剣のように飛ばされると、静まり返った空気が一転、どよめきが起こりました。
対戦形式は、中学の部は学年別のトーナメント方式、高校の部は1・2年合同のトーナメント方式。どちらもクラス代表3名による団体戦で、3名のうち2名が勝ったクラスが次の試合に進み、4回戦まで行います。ちなみに、競技かるた部員の出場は各クラス1名までとされており、部員は必ず1番席に入ることとなっています。
試合は「なにわづに さくやこのはな ふゆごもり いまははるべと さくやこのはな」という序歌でスタート。すると、それまでは戦略を打ち合わせる声などでざわついていた柔道場が一瞬にして静まり返り、読み手が上の句を読み始めるや否や、「ビシッ!」「バシッ!」と畳を叩く鋭く重たい音があちこちで響きます。それに続いて悔しがる声や唸り声が漏れ聞こえ緊張が途切れたかと思えば、次の句が読まれ始めると再び静けさに包まれる。そんな、寄せては返す波のような緊張を繰り返しながら1回戦が終了。休憩時間に入ります。ここで登場するのが、「新春歌かるた大会」の隠れた名物、東寺の門前菓子店「東寺餅」さんからの「よもぎ大福」の差し入れ。大きくて美味しくて食べ応え十分な大福で、これを目的に参加する生徒もいるとか、いないとか。
楽しむことで伝統行事のこころにふれる
大会に参加しているのは、各クラス3名の出場者と彼らを応援する生徒たち。出場者は、11月中旬の募集期間中にエントリーし、各クラスで3名を選出します。エントリーした理由について訊ねてみると、「昨年に出場して、面白かったから」「友達に誘われたから」「接戦を制したときの喜びがたまらない」といった回答が多く、また大会に向けては「12月上旬に期末テストが終わってから終業式までの間は、毎日2時間くらい、放課後に教室で練習をした」「家では、百人一首の読み上げCDで、一人で練習した」などと並々ならぬ意気込みを持って臨んでいるようでした。
15:00、閉会式。2時間半にわたって繰り広げられた熱戦の結果発表と表彰式の後、図書館長の安達先生にから「知ること」「やること」の意義について、また、スポーツ庁と文化庁を引き合いに出しながら文武両道の大切さについて講評をいただき、第56回新春歌かるた大会は幕を閉じました。
新春歌かるた大会は、図書館と国語科主催のため、各試合の勝敗やトーナメント結果を把握し管理するなど当日の進行はもちろん、準備や後片付けなど、大会全体の運営は高校1・2年生の図書委員によって進められます。また、競技かるた部員が、各試合の傍らに付いて審判を担当するほか、読み手を担当して進行をアシスト。山添先生にお話をうかがうと、「競技かるた部の活動としては、普段は読み手を担当することは無いので、この大会は読み手にチャレンジする良い機会なんでしょうね。皆、立候補してくれた生徒ばかりです」と教えてくださった。続いて、出場者のエントリー理由が、和歌の魅力ではなく競技の魅力だと答えた生徒が多かった点について質問すると、「それで良いと言うか、むしろ、それが狙いなんです。以前、個人競技スタイルだった頃は、出場者がなかなか集まらない状況でしたが、現在のチーム制に変えてからは出場者がぐっと増えました。皆で喜びや悔しさを共有することを楽しむ、ある種のゲーム感覚であってもいい、楽しんでもらうなかで和歌に触れてもらう、伝統行事を知ってもらうことが大切だと考えています」。その言葉に、ふと思い浮かんだのが、試合の始まりと終わりに、相手と読み手に一礼する姿。接戦を制して小躍りしたい気持ちを抑えて、あるいは惜しくも負けてしまい涙ぐみながらも、姿勢を正し相手に一礼し、続いて読み手の方向に向かって一礼する姿はとても清々しく、小さな感動を覚えました。古典や伝統行事だからと言って、必ずしも格調高く接する必要はなく、楽しむことが大切なのかもしれないと思いました。
結果は、以下の通りです。
【高校の部】
優 勝:2年7組
準優勝:2年3組
3 位:2年5組、1年7組
【中学の部】
1年 優勝:4組 準優勝:5組
2年 優勝:7組 準優勝:1組
3年 優勝:3組 準優勝:1組