令和6年度 京大講演会

12月17日、中学3年生と高校1年生(7・8組)を対象に京大講演会を開催しました。これは卒業後の進路について考える機会を提供するキャリア教育の一環であり、10回目となる今回の会場も京大のシンボル・百周年時計台記念館内の百周年記念ホール。講演会は二部構成で、一部で京大の二人の先生の講演を、二部で洛南出身の京大生・院生による学部・大学生活紹介を行いました。参加した生徒たちは、将来通うかもしれない大学の雰囲気を思い思いに味わいながら、内容の濃い話に耳を傾けていました。

第一部 講演会1 「大学での研究とは~京大文学部の場合~」
講師:金澤周作先生(京都大学大学院 文学研究科 教授)

「完璧に幸せな人生を送った人はいるか?」高校生のころに抱いた、そんな疑問から学究の道に入ったという金澤先生が今も探求し続けるのは、「真(人間とは何か?)」「善(どう生きるべきか?)」「美(美しいとは何か?)」。大学の文系の学問は、文学、哲学、美学というようにこれら三つと深くかかわるもの。「真」「善」「美」の探究は世界の深みに触れることであり、その対象は地球規模。さらに、その時間幅は先史時代から現在までと無限大。そのため学問の可能性は無数にあり、その無数に立ち向かうのが大学での研究というお話に、みんな深く聞き入っていました。

金澤先生のご専門は「イギリスのチャリティ史」。研究開始当時、これは未開拓のテーマだったそうで「世界でこんなことをやっているのは自分だけ」とワクワクするのも大学や大学院で学ぶ醍醐味。そんな金澤先生も、中学・高校時代には勉強でつまずくことがあったそうです。そのような自分の体験を踏まえ、今は迷うことがあっても目標は高く、いつか自分のやりたいことを見つけて充実した人生を過ごしてほしい、というメッセージを送ってくださいました。

第一部 講演会2 「京都大学iPS細胞研究所(CiRA)での研究生活」
講師:濵﨑洋子先生(京都大学大学院医学研究科 教授)

現在、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)で「胸腺上皮細胞からT細胞をつくる」ための研究に取り組んでいる濵﨑先生。T細胞は異物から体を守る免疫システムのいわば司令塔であり、ウイルス感染細胞やがん細胞の排除をつかさどる働きを持ち、最近では新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐことでも注目を浴びました。この研究は濵﨑先生のオリジナルで、誰もやっていないことに果敢にチャレンジする姿勢こそ、京大がずっと大切にしていることというお話はとても説得力がありました。

そもそも濵﨑先生がCiRAに入られたのは、あるテレビ番組で同席した山中伸弥先生の招聘を受けて。研究所にはルクセンブルクをはじめ世界各国からやってきた研究者が在籍し、みんなでワイワイ楽しく研究に打ち込んでいるそうです。また、CiRAでは京大の附属病院と手を組み、一般市民の方に研究に協力してもらうなど研究室の外での活動にも積極的に取り組んでいます。濵﨑先生にとって現在の研究生活はすべてが刺激的で面白く、いつか洛南の生徒と一緒に研究ができたら・・・そんな思いを語ってくださいました。

第二部 洛南卒京大生による学部・大学生活紹介

第二部では京都大学・大学院に進んだ13人の卒業生が、在籍学部・学科、専攻の魅力や中学・高校時代にしておいてほしいことなどについて語ってくれました。

1. 2020年卒業 文学部 5年

文学部には歴史学、社会学、心理学など幅広い分野があり、わたしは歴史学のなかで日本史を専攻。3年から研究室で専門的な勉強を始め、4年では卒論に取り組む。大学ではサークル活動を含め、興味のあることに時間を使ってほしい。

2. 2015年卒業 大学院文学研究科 歴史文化学 日本史学専修 博士後期課程 2年

大学院では文字資料と向き合う毎日。京大には30の図書館に700万冊もの蔵書があり、資料探しに困ることはない。豊臣秀吉の古文書など、貴重な資料をもとに研究できるのも京大ならでは。高校時代にやりたいことをじっくり探してほしい。

3. 2022年卒業 経済学部 3年

経済学と経営学の両方を学べるのが京大経済学部の特徴。実業家の講演会が多いのも魅力だ。やる気があれば理系入学も可能。京大経済学部を目指すのなら、図書館に経済を分かりやすく解説した本があるので、まずは関連書籍を読んでほしい。

4. 2021年卒業 工学部 理工化学科 4年

研究には基礎と応用の二つがあり、大学では主に「新しい発見」を目指す基礎研究に取り組む。わたしは触媒について学んでいる。工学部生は4年から桂キャンパスに通うが、とてもきれいなところ。特に夜景は洛南の本館みたいですてき。

5. 2020年卒業 大学院工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻 修士課程 1年

車の部品製作などに使われ、ミクロン単位の精度が求められる工作機械の研究に取り組んでいる。国際学会で発表したり、メーカーの展示会に行ったりと大学院生活は刺激が多くて楽しい。学年が浅いうちに何がしたいか、よく考えてほしい。

6. 2020年卒業 大学院工学研究科 建築学専攻 修士課程1年

建築学科では3年まで構造・環境・意匠という幅広い観点から建築を学び、4年から志望する研究室に配属され、卒論か卒業制作に取り組む。建築学科を卒業すると約95%が大学院に進む。就職先も建築・設計関係からゲーム関係まで多彩だ。

7. 2018年卒業 大学院工学研究科 機械理工学専攻 修士課程 2年

工学部はものをつくるところで、その範囲は機械、コンピュータ、エネルギーなど幅広い。工学部を志望したきっかけは他大学のオープンキャンパスでアンドロイドを見たこと。こういった行事は知見を広げるのに役立つので、ぜひ参加してほしい。

8. 2018年卒業 大学院理学研究科 数学・数理解析専攻 修士課程1年

理学部では3年から数理科学、物理科学、生物科学などの系に分かれる。高校時代から数学が好きだったが、200満点のテストで5点だったこともある。それでも数学をあきらめなかったのは、同じく数学好きの友人がいたから。友人は大切に!

9. 2018年卒業 大学院理学研究科 生物科学専攻 修士課程0年

「ELCAS」という京大主催の高校生を対象とした体験型科学講座に参加。そこで世界の最先端をゆく研究者の方のお話を聞き、京大理学部に進むことを決めた。阪大など他大学にも高校生が参加できるプログラムがあるので、興味がある人はぜひ!

10. 2019年卒業 大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 修士課程1年

現在「湯川記念館」とも呼ばれる京都大学基礎物理学研究所に所属。京大理学部は湯川秀樹博士をはじめ3人のノーベル賞受賞者を輩出したところ。さまざまな分野の最先端研究が行われ、優秀な学生と切磋琢磨できる環境はここならでは。

11. 2018 年卒業 大学院理学研究科 生物科学専攻 修士課程1年

数学に興味があったが、関数メインの大学数学になじめず生物学へと進路変更。京大理学部は学科に分かれていないので、こういったことも可能。今興味があることが5年後には変わるかもしれないので、いろんなことに目を向けておいてほしい。

12. 2020年卒業 大学院農学研究科 地域環境科学専攻 修士課程 1年

食糧、水、お酒、化粧品。これらすべてに農学がかかわり、このほかにもいろんなことができるのが農学部の魅力。世界には面白いことがたくさんある。勉強はもちろん、いろんな体験をしてやりたいことを見つけ、納得のいく人生を送ってほしい。

13. 2020年卒業 医学部 4年

京大医学部の一番の魅力は研究環境の充実。1年から研究室に入ることができ、マイコースプログラムを利用すれば2カ月間、国内でも海外でも好きなところで研究ができる。高校では吹奏楽部に所属し、そこで鍛えられたことが今役立っている。